健康な状態と要介護状態の中間
食の偏り(食事を選んで食べる・柔らかい物を良く食べる・以前食べられたものが食べられない)などの口腔機能の軽微な低下も身体の衰え(フレイルの一つの)として健康と口腔機能障害との中間にあり、可逆的(元に戻る)である状態を示します。
オーラルフレイルの始まりは、活舌低下、食べこぼし、わずかなせき込み、噛めない食品が増える、口の乾燥などほんのわずかな症状であり、見逃しやすく、気が付きにくい特徴があり注意する必要があります。
こんな場合はご相談ください
- よく食べこぼす
- しっかり噛みしめられない
- むせることがおおくなった
- 薄味がわかりにくい
- 滑舌が悪くなった
- 薬がのみにくい
- 口が乾燥する
- 運動することが少なくなってお腹がすかない
- 食事にかかる時間が長くなった
- 肉や魚を食べることが少ない
- 食べた後に口の中に食べ物がたまる
- 同じようなものばかり最近食べている
- 入れ歯が合わない
- 固いもの・歯ごたえがあるものが噛めなくなった など
全身に影響を及ぼす口腔機能
口腔機能低下と脳血管障害
歯周病が重症なほど、また噛み合わせの状態が悪くなるほど、動脈硬化のリスクが上昇します。歯周病ではリスクが2倍に、噛み合わせの崩壊でもリスクは2倍となります。
口腔機能低下と認知症
認知機能の低下の最大の原因は加齢でありますが、個人差がきわめて大きい症状です。
その理由に、加齢の他に、遺伝要因、全身疾患、慢性炎症、食生活、運動習慣、趣味、社会活動など複数の要因が複雑に関連していると言われています。
認知症と歯科に関連する要因とメカニズムとしては
⒈咀嚼(食べ物を噛む)により、低栄養による認知機能低下
⒉栄養の偏り、低栄養による認知機能低下
⒊軟性炎症による認知機能低下などが挙げられます。
とくに義歯未装着が脳の認知能力への刺激が低下し、かつ摂取食品の多様性がなくなり栄養の偏りや低栄養となったことで認知症の発症のリスクが高まります。
つまり、多数の歯がない方であっても適切な入れ歯を装着できていれば認知症のリスクを抑えることができます。
口腔機能低下とサルコペニア
サルコペニアとは、全身の骨格筋量、骨格筋力の低下を主徴とする症候群であるサルコペニアが発症すると、転倒のリスクが上がるなど日常生活に影響します。
わが国では、転倒や骨折が要介護になる要因の第4位です。
認知高齢者の噛み合わせの状態と転倒に関する研究では、噛み合わせが喪失している。
認知高齢者の方に転倒が多くみられたと報告されています。
口腔機能低下と運動機能低下の関連は
⒈噛み合わせの状態が運動機能に影響する
⒉入れ歯をしていない方の方が、転倒のリスクが高い
⒊噛み合わせの効率が低下している場合、サルコペニアが多い
⒋噛む力は、たんぱく質摂取に関係し、歩行速度に関係する
⒌噛み合わせの状態、入れ歯の不調はサルコペニアと関係がある
口腔機能低下と誤飲性肺炎
肺炎は日本の死因順位の第三位であり、その多くは誤飲性肺炎です。
口腔清掃不良が歯周病の原因となり、歯の数の減少や噛む機能、飲み込む機能の低下を招くだけでなく、口腔清掃不良と誤飲性肺炎の因果関係は強いことが明らかになっています。